写し

 
 

1.9 アーティキュレーションと共鳴

 

 軟口蓋を使った声の出し方、声帯と共鳴腔がどう音を生み出し反響させるかを理解することはここでお話するアーティキュレーションの基礎となります。アーティキュレーションとは言葉を明瞭に音声化すること、つまり滑舌や歯切れのことを指します。

 唇と歯、舌は 声帯から出てきた音の音波を変えるときに働く器官です。これらを調音器官と呼びます。唇、歯、舌の異なった使い方を組み合わせることで、様々な母音と子音を生み出すことができます。どんな動作でも、シンプルで調節の効く動きというのは体得しやすいといえるでしょう。

 舌は、言語の発声にあたって驚くほどの働きをする器官です。特に発音が難しい言葉や、長い間話さなくてはならない場合に、8本の絡み合った筋肉が動くことで、舌が素早く動き、言葉にすることができます。舌がもつれたり、子音をはっきりと発音できない、意味のない言葉が出てくるほとんどの場合は調音器官、特に舌がよく動いていないことに原因があります。

 しかし、普段話すときに舌、唇、歯が実際にどのように働いているかはまず考えないでしょう。そこで、今日は調音器官の働きについて詳しくお話していきます。

 

 

 調音器官に意識を向ける一番の方法は、早口言葉を練習することです。ここでは医学的側面から調音器官を解明していく代わりに、実際の動きを観察し、感覚をつかむことでそうした器官を使っていく方法を考えていきます。早口言葉を試してみることで、調音器官を使いこなせているか否かがすぐにわかります。

 相手の話に興味をもって耳を傾けているのに、話し手がもごもご話すときは、誰でもイライラしてくるでしょう。早口言葉は簡単で、効果的な発声練習です。特に英語を第二言語として学んでいる学生が、英語独特の発音方法を学ぶのにはかなりの効果があります。この練習は正確さと滑舌の良さを高める方法だと考えて下さい。

 まず、母音と子音を出すときにそれぞれの器官がどのように動いているかに注意を払いながら、次の早口言葉を練習していきます。

 

RED LEATHER, YELLOW LEATHER, YELLOW LEATHER, RED LEATHER 

では始めのRED LEATHERの部分だけやってみます。

一緒に。いいですか。では、

RED LEATHER 

もう一度。RED LEATHER

 

 ちょっと止まって、この二つの言葉を出すときに唇、舌、歯がどのような形をしているのか注目しましょう。ここでそれぞれの調音器官の動きを言葉にして説明してみます。

 REDは唇をRの音を出すために形をつくり、口を開けて舌を平らにし、軟口蓋を上げてEHの音を出します。最後は上歯茎の後ろへ舌を強く押し付けてDの音を出します。そして舌を丸めて上歯茎の後ろへ押し付けてLの音を出し、口を開けて、舌を平らにして軟口蓋を上げてEHの音を出し、舌を前に出し歯の間に置いてTHの音を出し、唇を突き出して舌を口の中で丸めERの音を出して、RED LEATHERとなります。

 ここでの目標は、感覚をつかむこと、単語ごとに意識的に各部分を動かし、音節ごとにそれぞれの特色を掴みながら口全体を使うことです。

 

RED LEATHER, YELLOW LEATHER, YELLOW LEATHER, RED LEATHER. 

一緒に。

RED LEATHER, YELLOW LEATHER, YELLOW LEATHER, RED LEATHER.

もう一度。

RED LEATHER , YELLOW LEATHER, YELLOW LEATHER, RED LEATHER.

 

 ここでのポイントは唇をわざと大げさに動かすことです。やりすぎるくらいに唇の形をつくって、ぞれぞれの音を発音してみます。音をつくるときに唇と舌を大げさに動かすと、ゆがんだひどい顔になると思うかもしれませんが、実際の動きは非常に小さく、聞き手にはなにも変わって見えることはありません。でも確かに違いは聞くことができるでしょう。普段から唇を意識して動かしていくことで、話し方が改善していくかどうか試してみてください。明快さが重要視される場面では、大げさだと思うくらいに唇や舌を使ってみましょう。

 では今度は次の早口言葉を練習していきます。

 

RED RUGGED RUBBER BABY BUGGY BUMPERS

ちょっとゆっくり言ってみます。

RED    RUGGED    RUBBER    BABY    BUGGY    BUMPERS

では一緒に。いいですか。

RED RUGGED RUBBER BABY BUGGY BUMPERS

もう一度。

RED RUGGED RUBBER BABY BUGGY BUMPERS

 

 他にも自分で早口言葉を選んで練習してみてください。早口言葉をできるだけ早く、しかし聞き手が理解できる早さで4、5回連続して言う練習をして調音器官を鍛えましょう。始めのうちは、4、5回目あたりから口が縺れてくるでしょう。次の早口言葉のように、ある早口言葉は連続して言えないようになっています。

 

YOU NEED NEW YORK, UNIQUE NEW YORK, YOU KNOW YOU NEED UNIQUE NEW YORK

 

 続けて練習することで滑舌がよくなっていくのがすぐにわかるはずです。ストレッチ運動のように毎日継続的に行うことで、口元の動きが改善されていきます。本当ですよ。ぜひやってみてください。では、ここまで頑張って練習をしてくれたみなさんのために、一度コマーシャルに入ります。

 

 

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 さあ、これまでに発声における2つの要素、軟口蓋を意識することとアーティキュレーションについて学び、練習を通して理解を深めることができました。ここからは、 声の出し方と 、声の質について考えていきましょう。

 では、始めにちょっと触れた共鳴についてお話していきます。発音するときはまず、音波が体の中で反響します。訓練をすることで、異なった共鳴腔に音を意識的に送ることができるようになります。ここでは最も一般的ですぐに活用できる2つの共鳴腔、胸腔と鼻腔に焦点を当てることにしましょう。ここで、か細い声で話す人の声を頭に浮かべてください。

 

(か細い声で)このように聞こえるでしょうか。

(か細い声で) または、このように。

(か細い声で)あるいはこんな感じに。

 

 このような声と対照的なのが、このポッドキャストで聞いているような声です。フルボイスと呼ばれる「太く、しっかりとした、よく通る」声です。これから聞く声についてどんな印象を持つか考えてみてください。

 

( か細い声で)こんな声はどうでしょう。

(フルボイス)このような声はどうですか。

 

 声の太さ、細さは音の高さとは関係ありません。高い声でも細かったり、太かったりすることもあります。大抵低い声というのは太い声ですが、時には細い声のときもあります。太い声と細い声の違いは、共鳴の仕方です。しっかりとした声は、胸腔と鼻腔で共鳴して作られ、部屋全体に通る厚みのある声になります。細い声はほとんど共鳴しないので、つまったような、こもった感じがします。また細い声で音量を上げたいときには緊張が伴うので、叫び声に似たような声に聞こえてしまいます。

 よく響く通る声は、強く、自信があるように聞こえ聞き手にとっても聞きやすい声です。聞き手にとって通る声は説得力がありますが、逆に細い声、共鳴のない声は、信頼性に欠け、自信がなく、おもねるような印象を与えます。

 声は人によって様々です。あなたの声は高いかもしれませんし、低いかもしれません。ちょっと音の高さや共鳴に意識を向けながら自分の声を聞いてみてください。どうしたら聞き取りやすく、自信があり、信頼感を与え、説得力のある声をつくることができるでしょうか。

 これを解決するために、まず口を軽く開いて、舌の後ろ部分を軟口蓋にくっつけるようにハミングの練習をしていきます。では5秒間ほど低い音程でHUNGと言ってみましょう。このように。

 

(低音で)HUNG

一緒に。いいですか?

HUNG

 

 次にどこに振動を感じるか考えながらやってみましょう。頭の上の方に振動を感じますか。顔、喉、あるいは胸かもしれません。ではやってみます。いいですか。

 

HUNG

今度は高音でやってみます。このように。

(高音で)HUNG

もう一度、どこに振動を感じるか考えながら。頭の上の方に振動を感じますか。顔、喉、あるいは胸でしょうか。いいですか。

(高音で)HUNG

 

 高音は鼻腔と頭のあたりで共鳴し、ヘッドボイスと呼ばれます。逆に低音はどちらかというと胸腔へ共鳴すると思います。しかし、少し練習すれば、どこに声を共鳴をさせるかを自身でコントロールすることができます。

 

(実際に共鳴を移動させながら)このようにまず鼻腔で共鳴させて、次は胸腔で、また鼻腔で、また胸腔でと共鳴を行き来させることができるのです。

 

 音程を変化させるときに、振動と共鳴を感じるようにしてみましょう。唇を閉じてハミングして、振動を唇の後ろから口の後方へ移動させる練習をしたのを覚えていると思いますが、実際に発声しながら各共鳴腔へ振動を移動させることもできるのです。ここでの目標は、聞き手が求めている声を見つけることです。繰り返しますが、低く共鳴する声は自信があり、説得力があります。声の高い人は、音程を低くすることを考慮してみましょう。高音、低音、どのような音程で話していても、音程に変化をつけることで声に多様性と活気をもたらすことができます。低音を練習するには口を開けてHUMとハミングしてみましょう。

 私の仕事の中で気づいたことですが、聴衆は高音で細い声をある時間以上耳にすると、普通以上に神経を働かさなければいけません。私たちの目的は聞き手が心地よく耳を傾けられる雰囲気をつくりだすことです。普段話す声をしっかりとした通る声にするために最適の共鳴方法を探し出すのがここでの目標です。

その切り替え方は人によって様々です。現代において賞賛される声は、胸腔で反響した音で、まるで天使のような美声を出すことができます。

 では、さっそく声を出してその振動を胸骨へ向けるようにしてみましょう。手を胸か頭の上に置き、声が胸や頭蓋骨に響いているか感じてみましょう。唇を閉じたり、軟口蓋を閉じたりしてハミングをしてみて下さい。そしてその振動を体のそれぞれの部分、胸骨、背中、さらにはお腹などに移動させてみましょう。これは発声に共鳴を伴わせる訓練になります。

 このエクササイズに慣れてきたら、いくつかの言葉や節を使いながら、軟口蓋を意識して共鳴の練習をしていきます。鼻腔と胸腔へ交互に共鳴させます。それぞれの共鳴のさせ方で自身の声を聞いて、どのような印象を与えられるのか考えながらやってみましょう。普段の話声とはずいぶんと違いがあるとすれば、発声の仕方を変えていくのは少し大変だとは思いますが、練習していくうちに自身が無理なく話せる範囲を見つけることができるはずです。すでにしっかりとした通る声が身についている人でも、共鳴のさせ方を少し変えることでその恩恵を受けることができるでしょう。横隔膜呼吸がしっかりしているほど、胸腔へ楽に共鳴させることができます。

 

 

 このエピソードの終わりを迎える前に、スタンスについてまた少しお話したいと思います。以前に様々なスタンスの取り方についてお話しましたね。実は、フレームの保ち方によって音程を下げることができるのです。

 声は体と一緒に働きます。ワイドスタンスをとっているときは、 あなたの声域で低い方の声が出ます。

逆に、ナロースタンスでは、あなたの声域の高い方の声が出るはずです。

 きちんとした声で明瞭な発音をする練習と、共鳴のさせ方を意識すること、そして音程の上げ下げをしっかり行うことで、より力強い声を習得することができ、それはスタンスをもって確実なものにすることができるのです。スタンスをもって発声をサポートすることは決してしっかりした発声への近道というものではありませんが、ベーシックスタンスやワイドスタンスを身につけておけば、体のフレームを使ってしっかりした厚みのある、自信に満ちた声を生み出すことができます。

 よくあることですが、私のクライアントが体のスタンスを調整して、ワイドスタンスをとってみると、発声の仕方にも驚くべき変化がみられます。これは座っているときも同じです。脚を広げて足をしっかりと地面につけるときと、足を組んでフレームが小さくなるときとでは声に違いが出ます。この二つの姿勢を交互にやってみて、実際に体と声にどう影響するか実感してみてください。

 これまでに、しっかりとした厚みのあるよく共鳴する声を称賛してきましたが、時には静かな声で話さなくてはならない時もあります。ナロースタンス、あるいはクウォーターターンがフルフロントやワイドスタンスの時の声、つまりフルボイスとは違った声を出すのに役割を果たすことを覚えておいてください。

 声とスタンスの組み合わせ方を模索していく中で、またいくつかの早口言葉を練習していきたいと思います。声というのは、声帯でのみでなく、全身を楽器のように使って作られるものだと思って意識を向けてください。

 第9話までお付き合いいただきありがとうございました。

 

まとめ

 

 

  1. 唇、歯、舌といった調音器官を使うことで、音節をわかりやすくするように音を出すことができる。
  2. 調音器官に意識を向け、コントロールしようとするほど、よりはっきりと発音することができる。
  3. 早口言葉は、調音器官を動かすのに最適の練習方法で、練習をすればするほどコントロールを効かせることができる。
  4. 声のウォームアップをした後に、滑舌を良くするための調音器官を動かす練習をするのがよい。
  5. 共鳴とは体の色々な空洞における響きのことであり、しっかりと共鳴させることで、部屋全体に通る声を出すことができる。
  6. 胸腔、鼻腔、口腔どこで共鳴するかによって、音の高さが変わる。
  7. フルボイス、か細い声になるかは共鳴にかかっている。
  8. 声域の低い声の方が胸腔で共鳴するが、共鳴させる部分は練習することによって、意識的に移動させることができる。
  9. 長い間話さなければならない時は、音程に変化をつけて、共鳴させる部分を聴衆のニーズによって使い分けることが大切である。
  10. まずは、声域で低い方の声を使って、胸腔で共鳴させる練習をするのがよい。

 

練習用ボーナス早口言葉

 

TWENTY TWO TULIPS TWIXT THE TWILL ×2回

 

SIX SHINING SOLDIERS ×2回

 

SHE SELLS SEA SHELLS BY THE SEA SHORE ×2回

 

PETER PIPER PICKED A PECK OF PICKLED PEPPERS ×2回

 

THEOPHILUS THISTLE THE SUCCESSFUL THISTLE SIFTER

IN SIFTING A SIEVE OF UNSIFTED THISTLES 

THRUST THREE THOUSAND THISTLES THROUGH THE THICK OF HIS THUMB ×2回

 

I AM NOT A PHEASANT PLUCKER 

I’M A PHEASANT PLUCKER’S SON  

BUT I’LL BE PLUCKING PHEASANT  

WHEN THE PHEASANT PLUCKER’S DONE. ×2回

 

TO SIT IN SOLEMN SILENCE IN A DULL, DARK DOCK

IN A PESTILENTIAL PRISON, WITH A LIFE-LONG LOCK

AWAITING THE SENSATION OF A SHORT, SHARP SHOCK

FROM A CHEAP AND CHIPPY CHOPPER ON A BIG BLACK BLOCK! x2回